【連載:身体を壊すスイングの正体 第1回】

~100歳までゴルフを楽しむために:「捻転差」という甘い言葉に隠された「腰壊し」の罠~
「健康のためのゴルフ」で、なぜ身体がボロボロになるのか?
「定年後も仲間と楽しくコースを回りたい」「運動不足解消のために」と始めたゴルフ。しかし、現実はどうでしょうか。整形外科やリハビリの現場には、腰にサポーターを巻き、膝に湿布を貼りながら「痛いけれど練習したい」と訴える「ゴルフ難民」が溢れています。
本来、ゴルフは心肺機能を高め、足腰を鍛える素晴らしい「生涯スポーツ」のはずです。それなのに、なぜ多くの方が身体を壊してしまうのか。それは、私たちが信じ込んでいる「ゴルフ界の常識」が、医学的には「身体を破壊する非常識」だからなのです。
最大の誤解:「腰を止めて、肩を回せ」の恐怖
レッスンやSNSでよく耳にする「下半身を安定させて(腰を止めて)、上半身を大きく捻じれ」という指導。いわゆる「捻転差(X-ファクター)」を作ろうとする動きです。しかし、理学療法士の視点で見れば、これこそが身体を壊す最大の原因です。
• 腰の骨は「回らない」設計: 実は、腰の骨(腰椎)は構造上、回旋できる角度が全分節合わせてもわずか5度から13度程度しかありません。
• 「雑巾絞り」の悲劇: 「腰を止めたまま肩を回す」ということは、この回らないはずの腰の骨に、全ての捻じれエネルギーを押し付けることを意味します。
• 逃げ場のない衝撃: 腰を固定した状態で無理に捻じると、腰の骨の間にあるクッション(椎間板)は、まるで濡れた雑巾を力いっぱい絞り上げるような状態になります。この「絞り上げ」を繰り返すことで、椎間板が潰れたり、神経を圧迫したりといった、深刻なダメージを自ら招いてしまうのです。
プロの真似が「身体の寿命」を縮めている
Instagramなどで見るプロの「鋭い捻じれ」や「地面を蹴り上げる動き」。これらは、強靭な筋力と驚異的な柔軟性を持つプロだからこそ、その強大なストレスに一時的に耐えられているに過ぎません。
身体の柔軟性が変化し始めた中高年ゴルファーが、形だけプロの真似をして「腰を止めて捻じる」ことは、自分の関節の「耐用年数」を自ら削り取っているようなものです。
「動かない場所」の代わりに「弱い場所」が犠牲になる
私たちの身体には、どこかの動きが止まると、別の場所が無理をして補おうとする「代償動作」という仕組みがあります。
• 運動連鎖の目詰まり: 本来、大きな回転を担うべきは「股関節」や「背中(胸椎)」です。しかし、ここが硬いまま「腰を止めて」打とうとすると、そのしわ寄せは全て腰、肘、手首といった、本来は支える役割の弱い関節に集中します。
• 組織の過労死: 肘の痛みや手首の違和感は、動かない大きな関節の「サボり」を、末梢の小さな関節が一人で引き受け続けた結果生じた、いわば「組織の過労死」の姿なのです。
JHGAが提案する「ウェルビーイング・ゴルフ」
私たちが広めたいのは、痛みに耐えながら飛距離を追うゴルフではありません。自分自身の「動ける範囲」を正しく知り、身体の仕組みに調和した「省エネで高効率」なスイングです。
増田哲仁プロが提唱する「力を入れない、歩くようなスイング」は、医学的にも極めて合理的です。
1. 「腰は止めない」: 股関節と骨盤をスムーズに連動させ、腰椎への「絞り」を解放します。
2. 「回るべき関節」を使う: 股関節や背中(胸椎)を正しく動かし、腰や膝を守ります。
3. 「サスペンション」を効かせる: 力を抜くことで筋肉がバネのように働き、インパクトの衝撃(地面反力)から骨や軟骨を守ります。
作成:佐藤光弘 監修:比嘉 竜二先生 監修


