【連載:身体を壊すスイングの正体 第4回】

股関節の真実:スイングの「最強エンジン」が「破壊の起点」に変わる時
股関節は、スイングの「心臓部」であり「盾」である
ゴルフスイングにおいて、股関節は二つの重要な役割を担っています。
一つは、地面を蹴った力を回転のエネルギーに変え、上半身へと伝える「メインエンジン」としての役割。もう一つは、前回解説した「回らない腰」に無理な負担がいかないよう、回転を引き受けて守る「防波堤(盾)」としての役割です。しかし、今、多くのゴルファーの股関節が、この重責に耐えきれず悲鳴を上げています。
「 Instagram流スイング」が招く、股関節の衝突事故
最近のSNSでよく見る、左足をピンと伸ばして強烈に腰をキレさせるスイング。一見カッコよく見えますが、実は股関節の中では恐ろしいことが起きています。
インパクトからフィニッシュにかけて、体には時速100kmを超える猛烈な回転エネルギーがかかります。これを左股関節一つで、ギュッと「内側に捻る」動きで受け止めて急ブレーキをかけなければなりません。
この強烈な捻りと荷重が加わると、太ももの骨(大腿骨)と骨盤の受け皿(臼蓋)の縁が、ガツンと物理的に衝突します。これを医学用語でFAI(股関節インピンジメント)と呼びます。
この衝突を繰り返すと、股関節のクッションである「臼蓋唇(きゅうがいしん)」という軟骨が、板挟みになって断裂したり剥がれたりします。これは、将来的に「変形性股関節症」を招き、最悪の場合は歩行困難になってしまう非常に危険な状態です。
「股関節が動かない」から、腰と膝が身代わりに
さらに深刻なのは、股関節が硬くて正しく動かないままスイングを続けることです。股関節が「回る」という仕事をサボると、身体は必死に他の場所で帳尻を合わせようとします(代償動作)。
股関節が内側にスムーズに回らないと、体は回転できず、左右にズルズルと流れる動き(スウェーやスライド)になります。これが、第3回で解説した腰椎への「絞り」と「横折れ」のストレスを倍増させ、ヘルニアを誘発します。
股関節が回らない分を、本来回るようにできていない「膝」で無理やり捻って補おうとします。これにより、膝の半月板や靭帯がジワジワと傷んでいくのです。
JHGAの提案する「股関節を救う」新常識
・「歩くように打つ」スイング、そしてJHGAが提唱する「ウェルビーイング・ゴルフ」では、股関節を壊さないための具体的な処方箋を持っています。
・「つま先を外に開く(アウトステップ)」身体が硬い方に、プロのような「つま先を正面に向けた構え」を強いるのは、医学的には「怪我の予約」をしているようなものです。あらかじめつま先を外に開くことで、骨の衝突を物理的に回避し、安全に回れる通り道を作ります。
・「股関節から折る(ヒンジ動作)」棒立ちではなく、股関節から正しく前傾することで、お尻の大きな筋肉がバネとして働き、関節を守る「天然のサスペンション」が機能し始めます。
・「力を抜いて連動させる」力を入れすぎると関節の「遊び」が消え、衝撃が直接骨に伝わります。歩く時のようにリラックスして全身を連動させることで、股関節一点にかかる負担を全身に逃がすことができます。
股関節を守ることは、ゴルフ寿命を守ること
股関節は、一度軟骨がすり減ってしまうと、完全な再生は望めません。飛距離のために股関節を削るゴルフを今日で終わりにしませんか? 自分の関節が「どれくらい動くのか」を正しく知り、その範囲内で効率よく打つ。これこそが、100歳まで自分の足で歩き、力強くスイングし続けるための唯一の正解です。
作成:佐藤光弘 監修:比嘉 竜二先生

