【連載:身体を壊すスイングの正体 第6回】

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肘関節の悲劇ー「手打ち」が肘を「衝撃の最終処分場」に変える

肘は「エネルギーの中継地点」
 ゴルフスイングにおいて、肘関節は非常に重要な役割を担っています。それは、体幹や股関節で生み出した強大なエネルギーを、末梢の手首やクラブへと伝える「力学的なハブ(中継地点)」としての役割です。
 しかし、この中継地点は、上下の関節(肩や手首)が正しく機能していれば衝撃を分散できますが、どこかに滞りがあると、瞬時に「衝撃の最終処分場」へと変貌してしまいます。練習を頑張るほど肘が痛くなるという方は、肘そのものが悪いのではなく、あなたのスイング構造が肘を破壊するようにできているのかもしれません。                                                                                   
                                                                         「ゴルフ肘」と「テニス肘」左右で異なる破壊の仕組み
 ゴルフでは、右打ちの場合、右肘と左肘でそれぞれ異なるタイプのストレスがかかります。
・ 右肘の悲鳴(通称:ゴルフ肘)
 主に右肘の内側が痛む病態です。ダウンスイングの後半、クラブを急加速させるために右肘を急激に捻りながら曲げる動作が繰り返されます。
  特に「ダフリ(地面を叩く)」の際、地面からの強烈な突き上げが肘を外側に無理やり曲げようとする力(外反ストレス)として加わります。これは野球のピッチャーが肘を痛めるのと似た、非常に過酷な負荷です。
・左肘の悲鳴(通称:テニス肘)
 右打ちの方の「左肘の外側」が痛むケースです。左腕はスイングをリードする役割を担いますが、インパクトの瞬間、強烈な振動をモロに浴びることになります。
  インパクトの瞬間、左腕の筋肉がピンと張った状態で異常な振動を浴び続けると、筋肉の付け根にある腱にミクロの断裂が生じます。これを繰り返すと、組織がボロボロに変性していってしまうのです。
                                                                            なぜ「手打ち」は肘を壊すのか?
 ゴルフ指導で、よくやってはいけないと言われる「手打ち(体を使わず腕だけで振ること)」は、医学的に見ると「体からのエネルギー供給を遮断する行為」です。
  本来、スイングの回転は股関節や胸椎(背中)という「大きな歯車」が担うべきものです。しかし、これらが硬くて動かないと、身体はスイングを完結させるために「肘」という「小さな歯車」を過剰に回転させて帳尻を合わせようとします。
  全身で分散すべき衝撃を、肘という小さな関節一箇所で引き受け続けた結果、組織が耐えきれなくなり「過労死」した姿。それが、あなたが感じている肘の痛みの正体なのです。
                                                                             その痛みは「火事」から「変性」へ
「半年以上、肘の痛みが引かない」という方は、もはや単なる「炎症(火事)」ではなく、組織そのものが「変性(ボロボロに質が変わる)」している可能性があります。 健康な腱組織が、強度の低い不完全な組織に置き換わってしまうと、単に休んでいるだけでは元に戻りません。組織の柔軟性が失われ、まるで「使い古したなめし革」のように硬くなってしまうのです。
                                                                             JHGAが提唱する「肘を救う」動作処方
 「力を入れない、歩くように打つ」スイング、そしてJHGAが提唱する「ウェルビーイング・ゴルフ」には、肘を救うための明確な答えがあります。
・「連動」を取り戻す                                                                肘だけで打つのをやめ、肩甲骨や体幹と腕が「一本のユニット」として動くように誘導します。肩甲骨が「動く土台」として機能すれば、肘の負担は劇的に減ります。
・ グリップ圧の適正化                                                                 ギュッと力一杯握る(力む)と、前腕の筋肉がガチガチに固まり、衝撃を吸収するバネ(サスペンション)が機能しなくなります。リラックスして握ることで、インパクトの振動を全身へ逃がすことができます。
・「遊び」を作る                                                                         力を抜くことで関節に「遊び」が生まれ、組織を衝撃から守る防衛機能が回復します。
[結論] 肘を救う鍵は「全身」にある                                                                  肘の痛みは、肘そのものが悪いのではなく、身体全体の「チームワーク」が乱れているというサインです。
 理学療法士の視点では、肘の痛みを「ゴルフの宿命」として放置することはお勧めしません。「歩くように打つ」自然な連動を取り戻すことで、肘へのメカニカルストレスを解消し、再び心地よいスイングを取り戻しましょう。

作成:佐藤光弘 監修:比嘉 竜二先生