【連載:身体を壊すスイングの正体 第7回】

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プロも苦しむ「腱板損傷」。あなたの肩は「なめし革」になっていませんか?

肩はスイングの「パワー増幅器」
 ゴルフスイングにおける肩関節は、単に腕を支える場所ではありません。医学的な視点で見れば、体幹や股関節で生み出された巨大なエネルギーを、遠心力に抗いながらクラブへと伝え、さらに増幅させる「パワー・トランスミッター(変電所)」のような役割を担っています。
 しかし、肩は人間の中で最も大きく動かせる関節である反面、最も不安定な関節でもあります。この「自由度の高さ」の代償として、私たちはスイングのたびに、肩の中にある繊細な組織を少しずつ削り取っている可能性があるのです。

肩の中で起きている「板挟み」の正体
 ゴルフスイング、特に深いバックスイングや力強いフォロースルーでは、腕を極端な角度まで動かします。このとき、肩の内部では「インピンジメント(衝突)」という現象が繰り返されています。
  肩を動かすインナーマッスル(腱板)が、腕の骨と肩の屋根(肩峰)の間で繰り返し挟み込まれます。
  本来、肩は周囲の筋肉がバランス良く引き合うことで、骨を正しい位置に保っています。しかし、無理なスイングでバランスが崩れると、腕の骨が上にズレ上がり、さらに「板挟み」を悪化させるという悪循環に陥ります。
  これを数十年繰り返すと、健康だった腱は弾力性を失い、まるで使い古した「なめし革」のようにボロボロの状態へと変わってしまいます。

なぜ「肩」が犠牲になるのか?(運動連鎖の目詰まり)
 理学療法士の視点で見れば、肩の痛みは「肩だけの問題」ではありません。肩は、他の部位の「サボり」を押し付けられる最終地点なのです。
  加齢やデスクワークで背中が丸まり、硬くなっているゴルファーは、身体を十分に回せません。その「回らない分」を補うために、腕だけを無理やり後ろに引き込もうとします。
 股関節や背中が使えないまま「深いトップ」を作ろうとすれば、肩関節の限界を容易に超えてしまいます。これが、腱をボロボロにする最大の原因です。

JHGAの処方箋:「安全な可動域」を知る
 「力を入れない、歩くように打つ」スイング、そしてJHGAが提唱する「ウェルビーイング・ゴルフ」は、あなたの肩を守るための明確な防衛戦略を持っています。

・「肩甲骨」を土台にする: 肩関節だけで腕を振るのではなく、肩甲骨を正しく動かし、安定させることで、肩にかかる負担を全身に分散させます。
・「自分だけのトップ」を設定する: プロのような高いトップが正解ではありません。理学療法的なチェックに基づき、「これ以上上げると腱が挟まる」という限界点を知り、その安全な範囲内で最大効率を出すスイングを構築します。
・ 遠心力を味方にする: 力を抜くことで、スイング中の強烈な遠心力の中でも、肩の骨が正しい位置(求心位)に留まりやすくなります。これは、腱を「板挟み」から守る最高の防御です。                                                                     
 肩の痛みは、ゴルフ人生の終わりを告げるサインではありません。しかし、それは「今のままのスイングでは、組織がもう持ちません」という身体からの最後通牒です。
「歩くように打つ」自然な連動を取り戻すことで、肩へのストレスを劇的に減らすことができます。100歳まで笑顔で、颯爽とクラブを振り抜くために。今こそ、形だけを追うスイングを卒業し、自分の身体を慈しむスイングへとシフトしましょう。

作成:佐藤光弘 監修:比嘉 竜二先生