【連載:第9回 身体を壊すスイングの正体】

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腰ではなく回るべき場所「胸椎」を動かす                                                                               

「回るべき場所」を動かせばスイングは劇的に楽になる
「年々、体が回らなくなってきた」「バックスイングが浅くなって飛距離が落ちた」。 こうした悩みを抱えるゴルファーの多くは、一生懸命に腰を捻じろうとしたり、無理に腕を振り上げたりして解決しようとします。しかし、理学療法士の視点で見れば、それは解決策どころか、故障への近道です。
 実は、スイングの回転不足を解消する鍵は「腰」ではなく、あなたの「胸椎(きょうつい)」、つまり背中の真ん中あたりの骨にあります。ここが正しく動いていないことが、全身の運動連鎖を「目詰まり」させている最大の原因なのです。

身体には役割分担がある
 理学療法には、隣り合う関節が「動く役割」と「支える役割」を交互に担うという「Joint by Joint Theory(ジョイント・バイ・ジョイント理論)」があります。
• 動くべき場所(モビリティ): 股関節、胸椎、足首
• 支えるべき場所(スタビリティ): 腰椎、膝、肩甲骨
 第3回で解説した通り、腰椎(腰の骨)はわずか5度〜13度程度しか回らない「支えるための骨」です。一方で、そのすぐ上にある胸椎は、構造上しっかりと回るようにできています。 ところが、現代人の多くはデスクワークやスマホの使用で背中が丸まり(円背)、胸椎がカチカチに固まっています。いわば、「回るべき大きな歯車(胸椎)」が錆びついて居眠りをしている状態なのです。

胸椎がサボると、腰と肩が「身代わり」になる
 胸椎という大きな歯車が動かないままスイングを完結させようとすると、身体は他の場所で帳尻を合わせようとします(代償動作)。
胸椎が回らない分を、回らないはずの「腰」を無理やり捻じって補おうとします。これが椎間板を雑巾のように絞り上げ、破壊する原因となります。
背中が丸まって固まると、肩甲骨の動きもロックされます。その状態で腕を高く上げようとすると、肩のインナーマッスル(腱板)が骨に挟み込まれ、ボロボロに変性(なめし革状に変化)してしまうのです。
「背中が動かない」という一箇所のサボりが、腰痛や肩の痛みという形で全身に波及しているのです。

首(頸椎)の危機
 さらに見落とされがちなのが「首」への負担です。ゴルフスイングは、体幹が激しく回転する一方で、目はボールを追い続けるため、首には強烈な捻じれが加わります。
  スイング中、首から肩にかけての血管や神経は、時速100km以上の慣性の中で「圧迫」と「牽引」を同時に受けます。
 この強烈な刺激が繰り返されると、一時的な酸欠状態(虚血)に陥り、指先のしびれや腕の鈍痛を引き起こすことがあります。首が硬いまま無理に顔を残そうとする動きは、脳への血流にも影響を与えかねない、非常にデリケートなリスクを孕んでいます。

JHGAが提唱する「楽でスムーズな」回転の作り方
 「力を入れない、歩くように打つ」スイングは、この「錆びついた胸椎」を優しく呼び覚ますための、医学的にも最高のメソッドです。
・「腰」ではなく「胸」を意識する: 腰を固定して捻じる(捻転差)という考えを捨て、胸椎が本来持っている可動性を活かします。これだけで腰への負担は劇的に減ります。
・ 顔の向きを自由にする: 「ボールを頭を動かさずに見る」という呪縛を解き、首の捻じれが限界を迎える前に、自然に顔を目標方向へ向けていきます。これにより、首や神経へのストレスを回避します。
・ 脱力で「遊び」を作る: 全身の力を抜くことで関節に「遊び」が生まれ、筋肉がバネ(サスペンション)として機能し始めます。このバネが、インパクトの衝撃から首や背骨を優しく守ってくれるのです。

背中が変われば、ゴルフ人生は10歳伸びる
 胸椎という「本来回るべき場所」を正しく動かせるようになると、スイングは驚くほど軽く、スムーズになります。それは単にゴルフが上手くなるだけでなく、アライメント(姿勢)が整い、全身の血流が改善される「機能的な若返り」を意味します。
 100歳まで笑顔で、颯爽とクラブを振り抜くために。 今日から「腰を捻じる」のをやめて、「背中の居眠り」を起こしてあげましょう。

作成:佐藤光弘 監修:比嘉 竜二先生